パナマ便り vol.3
皆さんは無菌培養という技術をご存知ですか。
無菌培養とは、バクテリアや菌などがいない無菌の環境下で植物の種子や細胞を培養する技術のことをいいます。短期間に大量の植物体を得られる、病気に侵されていない健全な苗が獲得できるなどの利点から農業や園芸の研究に広く利用されています。通常は植物の成長に必要な栄養素を含んだ寒天培地の上に播種または植物組織を置いて培養します。この技術はラン科植物の栽培にも重要な役割を果たしています。
ご存知の方も多いと思いますが、ラン科植物の種子には成長に必要な栄養素がなく、発芽するにはラン菌と呼ばれる共生菌の助けが必要となります。このラン菌と呼ばれる菌類は種子に感染をするのですが、ラン科植物は逆にこの菌の代謝系を利用して外部から成長に必要な栄養を得ます。ちゃっかりしてますね。しかし、自然環境下ではラン科植物の種子が共生菌と出会う確率は低く、発芽率は1/100000〜1/300000と言われています。
この粉のようなものがラン科植物の種子です↑
そこでラン科植物の栽培にも無菌培養技術が応用されています。培地に成長に必要な栄養が含まれているので、種子はラン菌の代謝系を利用しなくても発芽、成長することができます。早いもので播種後1週間で発芽し、その後プロトコームと呼ばれる組織を形成、半年で3〜5cmの苗に成長します(成長速度は品種によって多少異なります)
播種後約半年の個体です(2010年6月25日播種)
APROVACAでは絶滅危惧種の野生ラン科植物を増やすため、今まで無菌培養をidiap(INSTITUTO DE INVESTIGACION AGROPECUARIA DE PANAMA )という農業研究所に協力してもらって行っていました。APROVACAが今後、ラン科植物の保護施設としてより発展していくために無菌培養技術の習得が必要であるとメンバーからの要望もあり、
今回、新しい試みとしてランセンター内に簡易的な実験室を作り、試験的にAPROVACAでラン科植物の培養を始めました!
- 2011.01.12 Wednesday
- パナマの素顔
- 23:47
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- by cospa